ちょっと長いですがウインドサーファーや海を愛する方々に読んでいただけると幸いです。
ここ数日、ハンザヨットの動画編集に追われていましたが、僕がこのヨットに大変魅力を感じるその理由は大きく3つあります。
それは、ウインドサーフィンと密接に絡んでいます。
まず、セーリングの参入ハードルが一気に下がることです。
ウインドサーフィンの最初の関門はセイルアップと沈(水中に落ちること)の繰り返しです。
しかも、風がどこから吹いているかわからないため、セイルに裏風が入って沈します。
その点、ハンザヨットは起き上がりこぼしの原理で沈しない構造になっており、全くの初心者でも沈せずに、風の操り方をマスターできます。
だから、ハンザヨットで風をマスターしてからウインドサーフィンした方が、実は早道です。
今まであまたのウインドサーフィン初心者を教えてきました。
もっともセンスが良かったのは早稲田の野球部の1年生で、1時間ほど教えたら200メートルほど初日から走れました。
ちなみに自分の場合は、材木座海岸の強風でしたが初回は50メートルほど。
それが、ウインドサーフィン未経験の慶応大学に入学したてのヨットマンに教えたときは1時間で、かなり沖まで行って帰ってきました。
今回、明治大学に三年ぶりにウインドサーフィン推薦で入った学生は、ヨットから転向させ勧誘したと聞いていますが、ヨットとウインドサーフィンはとても親和性の高いスポーツです。
だから、逆にウインドサーフィンからヨットへの転向も可能でハンザがそのブリッジ役になりうるというのが、二つ目の魅力です。
いつも不思議に思うのですが、年間100日くらい海に出てウインドサーフィンに打ち込んでいた学連の学生たち。それが卒業と同時に、9割以上の割合で完全に足を洗ってしまうことです。
一番の理由は、練習量が減って後輩たちに勝てなくなる、あるいは負けてしまい、ウインドサーフィンがつまらなくなること。
しかも、レースに出たら、大変な筋肉痛で月曜日からの仕事に支障が出てしまう。
卒業と同時にウインドサーフィンを売り払ってしまっていたら、なおさら海に遠ざかりそのままです。
1988年までは学連はサーファー艇だったため、セイルのサイズが5.7㎡でした。しかし、今のデクノ艇では7.8㎡と大きくなったため、卒業して10年も海をはなれたら、復帰はかなり厳しい。
その点、ウインドサーファー艇はかなりハードル低く、50代、60代のシニアが徐々に復帰しつつあります。
これは世界的な傾向で、今年の年末の世界選手権は凄い人数になりそうです。
ウインドサーファー艇が特におじさん(日本には世界で1位、2位を争う凄いおばさんも2名おりますが)たちを魅了するのは、若いひとたちに混ざって大会で前を走れるからです。
テクノ艇だったらまずビリの方だけど、ウインドサーファー艇ならば普通に真ん中くらいで走れる。あわよくばトップも狙える。
しかも、一番のポイントはそれならば今の学生たちがサーファー艇で出場したら前を走れるかというと、逆におじさんたちになかなか勝てないということです。
艇の走らせ方が若干違うため、熟練が必要なのです。
例えて言うならば、ゴルフとゲートボールが同じ場で勝負したら、なんだゲートボールじゃないかと馬鹿にされそうでおじさんは肩身狭い思いを強いられるかもしれない。
しかし、年齢関係なしにフラットに闘えるならばどうでしょうか。
しかも、熟練のシニアの方が勝てるとしたら。
60歳や70歳過ぎて、若いひとたちと同じ土俵で闘えるスポーツは、馬術?、射撃?、カーリング?
僕が思うに、セーリング、中でもウインドサーファークラスと、ハンザヨットは比較的に低コストで、かつ、シニアが楽しめる数少ないスポーツだと思います。
ハンザヨットの動画で講師を務めた長谷山裕さんは65歳です。5月には、江ノ島の大会で優勝しています。10月にはポルトガルの世界選手権にも出場を予定しています。
また、ハンザヨット協会の会長はかつて日本セーリング連盟の初代専務理事を務めた貝道和昭さんですが、やはり、ハンザヨットで80歳過ぎて大会で優勝しています。
ハンザヨットは、ユニバーサルデザインでハンデのある方でも、車椅子の方でも乗れる構造のため、極端な話、特養からレースに出場して優勝ということもあり得るわけです。
健康寿命と平均寿命の差が10年ある中で、誰しもが抱える寝たきりリスク。
人間が最も恐れるのは死だと思いますが、それ以上に嫌なのは寝たきり老人になって何年もベッドに縛られ、死を迎えることではないでしょうか。
ミニマリストで有名な稲垣えみ子さんは、「寝たきりになっても、幸せを感じることができたら、その人間は最強」と話していました。
寝たきりになったら人生おしまいと思いがちなところ、しかし、老人ホームからでもヨットレースに出場できる。
そんな人生プランを最後に描けたらどうでしょう。
このような実例は、まだ存在しないかもしれません。
障がいを抱えた子供がハンザのヨットレースで優勝して見違えるように元気になったという例はあると聞きました。
このため、今、運営に関わっているホームから、ヨットレースに参戦するロールモデルを作る価値があると思って準備を進めています。
また、それを映画に出来たら最高ですね。
そして、3つめのハンザヨットの魅力は、マリンスポーツが学校教育に採用される可能性を高める点です。
逗子市長時代は、ウインドサーフィンを学校教育に取り入れようとしました。実際に市民ウインドサーフィン教室を開催し、講師を務めたこともありました。
しかし、学校教育への導入となると学校長が安全面から難色を示し、池子のプールにウインドサーフィン浮かべて触らせるくらいしかできませんでした。
ウインドサーフィンを学校教育に正規に取り入れているのは、私の知る限り、東京都父島にある小笠原高校くらいです。
明日、17日は海の日ですが、海の日を休日にして祝うのは世界でも日本だけ。
それなのに島国の特性を活かしてマリンスポーツの普及に力を注がないのは非常にもったいないことだと思います。
その点、安全面からハンザヨットは学校教育に取り入れられる余地が大きい。
実際に、今日は山形県尾花沢市の小学校でハンザヨットの学年イベントが開催されて、講師となる長谷山さんが今回、私と一緒に制作したハンザヨットの動画を活用されるとのこと。
そのヨットレッスン動画を以下にアップしています。
本動画の制作には、以上つらつらと述べてきた思いを込めながら編集しましたが、ハンザ・セイリング・ジャパンの強力修代表、景山裕二テクニカル・ディレクターにも監修のご協力をいただきました。関係者の皆様に心から感謝です。本当にありがとうございます。
いずれにしても、ウインドサーフィンをこれからも続けますが、ハンザヨットにも関わることで相乗効果を目指したいです!!
【予告編】60秒
【ハンザクラス入門 (1)帆走技術編 5つのステップ】 -Introduction to Hansa Class (1) Sailing Techniques: 5 Steps- 9分54秒
【ハンザクラス入門 (2)艤装編 5つのステップ】 Hansa Class Introductory Outfitting Edition】23分9秒