【前橋市長の不倫疑惑VS田久保市長】
- Kazuyoshi Nagashima
- 9月25日
- 読了時間: 7分
更新日:5 日前

若き女性市長、群馬県の小川晶前橋市長の不倫疑惑。
昨日うちの事務所では、不倫された奥様からのご依頼で、ご主人の不倫相手から100万円支払っていただいた事案がありました。
その他にも不倫の慰謝料請求事案を抱えており、世には不貞行為にまつわる争いが多数あることを実感しています。
不倫をされた配偶者の怒りのパワーは凄まじいものがあります。
配偶者から聞くに堪えないような性行為のディティールを聞かされたケースや、なかには撮影された動画を目の当りにしてしまった方。
怒りだけでなく、不倫された相手のショックも大きく、法務相談に留まらない身の上相談も必要となるケースがほとんどです。
不倫されたご主人が怒りがおさまらず、相手の家に直接行きたいといって「それは絶対にしてはだめです」と止めたケースもありました。
離婚話にもなる重い話ですが、自分の親が離婚した経験(自分は高3のときだったので覚悟はできていましたが、小学生だった妹には気の毒でした)から、お子さんがいる方には離婚を留まるように説得して、慰謝料がうまく請求できることに腐心しています。
【前橋市長は奥さんに訴えられたらどうなるのか】
さて、今回の前橋市長の不倫疑惑では、市長と部下との関係。
前橋市長とその部下は「低層階でそれぞれの部屋ごとに駐車スペースがあるタイプのホテル」への出入りを記者に直撃され、市長がホテルを利用した回数は10回以上などと報じられています。
これに対して、群馬県の小川晶前橋市長は「男女の関係はない」などと事実上不貞行為はなかったと否定しています。
しかし、小川晶前橋市長は一緒にホテルに繰り返し同行したとされる男性の奥様から不貞行為に対する慰謝料請求の訴えを起こされ、そこで支払いを命じられる可能性があります。
判例上は、例えば「ラブホテルへ行ったがマッサージしかしていない」との抗弁が否定され
400万円の慰謝料を認めたケースがあります(東京地判平成21年3月11日)。
このようにホテルに入って「男女の関係はなかった」と主張しても認められないケースがほとんどのようです。
他方、ラブホテルに滞在した事実を認定したにもかかわらず、男女間のメールのやりとりから不貞行為を認定せず、不貞慰謝料請求を棄却したという判決もあります(福岡地判令和2年12月23日)。
このように室内で不貞行為がなかったことを立証できれば、小川晶前橋市長は裁判でも負けない可能性もありますが、男女関係になかったことを立証するのは並大抵のことではないと思います。
【男女関係はないと主張して逃げ切ったケース】
「一夜は共にしたが男女関係はない」で、思い出すのが総理大臣にまでなった菅直人さんの件です。
1998年11月7日の出来事でホテルの一室から出てきたところを記者に待ち伏せされた事件。
余談ですが、当時、菅直人さんは、日曜日早朝のフジテレビの報道2001に出演する際に、フジテレビの経費持ちで近くのホテルへの前泊が認められていたそうです。
フジテレビの報道庶務の女性が、菅さんのホテルの領収書清算の内訳に、室内冷蔵庫のドリンクバーが空になるほどの金額を請求してくるので「これだけのアルコールを毎回、ひとりで飲むはずはない」という情報が外部に漏れて、週刊誌記者の待ち伏せスクープにつながったと、当時、関係者から直接聞きました。
当時の菅さんは総理になる10年以上も前の出来事で、かつ、野党の一議員だったため、「一夜は共にしたが男女関係はない」という説明でうまく乗り切り、その後、総理大臣にまで上り詰めました。
【前橋市長と伊東市長との違い リコールできるか】
ところが今回は、大騒ぎになっている伊東市と同じ市長の話。
一野党の国会議員とは違い、地方自治法の100条委員会もあれば、市長不信任もあります。
ただ、伊東市との大きな違いは、伊東市は市長が就任して1年を経過していないので伊東市民が今はリコール(解職請求)できません。
ところが、前橋市長の就任日は令和6年2月28日であり、就任日から1年以上が経過していることから物理的には市長のリコールもありえます(とはいえ、1972年に当時人口約10万人超の秋田市で市長リコールが成立したケースがありますが、32万人以上人口がある前橋市で市長リコールが成立するのは人口約6万人に伊東市と比べて現実的ではありません)。
そうなると、市長が自ら辞めるか、前橋市長が自ら辞職しなければ100条委員会の開催は避けられない可能性が高いと思います。
【公用車で本当にラブホテルに乗り付けたのか】
今、問題視されているのは、市長が逢瀬していた際に、公用車を活用していたということ。
さらに災害時にという点が問題視されています。
ここは100条委員会が開催された場合には(あるいは開催されない場合でも)深く掘り下げられる論点だと思います。
まず、市長が逢瀬をしていたとされるホテルは部屋ごとに駐車スペースがあるタイプ。
この形態のラブホテルは風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律により、既存店舗でなければ営業は事実上認められていません。
フロントを介さないで部屋に出入りできるタイプのラブホテルが犯罪の温床になる恐れがあるため、新規開業が事実上認められていないのです。
そのようなホテルに行くために本当に公用車をどれだけの頻度で使ったのか。
監査請求された場合には費用の返還請求が認められる可能性があります。
【市長は災害対策本部長】
さらに問題は、群馬県内で記録的短時間大雨情報が発表された10日もホテルに缶詰だったと報道されている点です。
市長は災害時には、災害対策本部長になります。台風時に例えば大雨特別警報が出された場合は、市役所に詰めて本部長として、あれこれ指示を出します。
私が逗子市長をしていた時も、台風時に大雨洪水警報が出されたら、たとえ夜でも役所に行き、例えば河川氾濫の目安となる河川(逗子でいえば田越川)の警戒水位を見極めて、警戒水位が超えたら、避難所を開設して防災無線を活用して住民に避難指示を出していました。
夜中のときには防災無線が使えないので、職員に手分けして一軒ごとに戸を叩いて避難の呼びかけをするかどうか決断を迫られたこともありました。
そんな市長職が、記録的短時間大雨情報が出ているときに、ラブホテルで部下と二人きりで4時間も逢瀬をしていたら、それは前橋市民が怒るのも当然だと思います。
しかし、前橋市の防災機器管理本部に確認したところ、「9月10日は前橋市に記録的短時間大雨情報は出ておらず、通常の勤務体制であった」と説明しています。
実際にその日に記録的短時間大雨情報が出されていたのは水上方面の山間部だったようで、「前橋市内には警報も注意報も出されていなかった」と前橋市の職員は釈明しておりました。
【前橋市長VS伊東市長 刑事事件になりうるか】
いずれにしても、議会からは追及されることになると思いますが、伊東市長と比較した場合、前橋市長が刑事被告人にはなりそうもない点は大きな違いです。
不倫は罪深い行為ですが、犯罪ではありません。
裁判となっても民事事件上の処理であり、前科がつくわけでも逮捕されるわけでもありません。
公用車の使いかたが荒く、別件も出てきて業務上横領などで刑事告発でもされれば別ですが、今のところ100条委員会を経て議会から刑事告発される可能性は低そうです。
前橋市長の少し気がかりな点は「弁護士や支援者」と相談して進退を決めるということで伊東市長と同じように「弁護士」というワードを持ち出した点です。
中途半端に法解釈を持ち出すと沼にはまります。前橋市長も弁護士ですから、法解釈を楯に自分を守ろうとすることはあるでしょう。
しかし、「住民から信任を得ている」ということが、すべての権力の源泉となっている市長は、どんなに理屈を並べても市民からの支持がなければ、影響力が限りなく低下して仕事にならなくなります。
だから、前橋市長がもし、市長職を続けたいのであれば、一旦辞職して出直し市長選挙をやるステップを踏まないと続投は難しい気がします。
前橋市の出直し市長選挙を実施すれば市民の税金が約9000万円(前回の市長選挙時の決算ベース。
ただしこのときは市議補選もセット)もかかります。このため、自らの前橋市長の退職金の返上(2700万円)とボーナス(年間562万7812円)を4年間返上するというくらいの公約を掲げれば、小川晶前橋市長は信任を得られるかもしれません。
伊東市長と違って小川晶前橋市長は辞めても弁護士の仕事はできるわけで、潔く市長を辞職する可能性もあります。
市長を続けるにしても辞めて弁護士に戻るにしても、傷は浅いうちに対処すべきというのは伊東市長という反面教師を小川晶前橋市長がどう見ているかにかかっている気がします。
市長職に最も必要な能力は決断力です。