【田久保市長に知られたらマズイ法律上の盲点】
- Kazuyoshi Nagashima
- 9月11日
- 読了時間: 5分
更新日:9月15日

伊東市の田久保市長が大義なき議会解散という禁断の一手を打ちました。
これにより、伊東市議会の出直し選挙は10月19日に実施されることが本日の伊東市選挙管理委員会によって決定されました。
今後、田久保市長は、田久保派の市議候補を7名誕生させて、二度目の不信任を阻止できるのか。あるいは、失職した後の市長選挙まで田久保市長が延命し、12月のボーナスを手にするのか、などに焦点が移っています。
たしかに、伊東市のボーナス算定基準日は12月1日(支給日は12月10日)。
この日まで田久保市長が居座れば、月額855,000円(別途退職金加算分あり、毎月384,750円)の報酬に加えて、1,859,625円の期末手当(伊東市職員課調べ)を手にすることが可能になります。
メディアや関係者の見立てでは、出直し市議会議員選挙で現メンバーの多くが再選される予想です。改選後、初めての議会で3分の2以上の議員が出席し、再び不信任決議が過半数で可決、首長は失職するというルールに基づいて田久保市長もここでピリオド、というシナリオです。
ところが田久保市長のこれまでの言動から推測するに、常識のある首長ならば取らない判断をする人物です。となると、地方自治法のスキマや盲点を突いてくる可能性があります。
今回の伊東市議会議員選挙で、田久保派を7人勝たせなくても、二度目の不信任を阻止できてしまう首長にとってはいわば裏技ともいえる手法。
その手法とはなんでしょうか。
地方自治法の101条では『議会は長がこれを招集する』と定められています。
地方自治法101条の2項、3項では『議会側(議員側)は長に対して臨時会の招集を請求』できます。
また、これらの規定により『長は議会から請求されたら20日以内に議会を開催しなければならない』という決まりになっています。
この規定を守らず議会を開催しないで、専決処分を乱発したのが平成22年当時の鹿児島県阿久根市長の竹原信一さん(現・阿久根市議会議員)です。
ちなみに、それ以前では神奈川県葉山町で昭和48年の第3回、第4回の定例会を開催しなかった(当時の議事録が存在しない。葉山町議会事務局調べ)と聞いたことがありますが、首長が議会を開催しないということは、ごく稀にあります。
こういう破天荒なリーダーに対抗するために、地方自治法101条に第5項と第6項が加えられ平成24年に改正されました。
このとき私は衆議院議員としてこの地方自治法の改正案に賛成しましたが、当時の竹原市長に「竹原さんのせいで地方自治法が変わりました」と電話したところ、「あっ、そうなんだ」と驚いていたこともあり、よく覚えています。
このときの改正ポイントは、20日以内に『長が招集しない場合は、議長が10日以内に招集しなければならない』と定められたこと。つまり、『市長が議会を開催しない場合は、議長が招集しなければならない』というルールに改められたことです。
この法改正により、伊東市でも10月19日の市議会改選後直ちに、市長が臨時会を開催しない場合、制度上は、議長が臨時会を開催しなければならないと定められているため、議長が臨時会を開催できます。
しかし、今回のケースでは改選後の市議会になるため、10月19日の改選直後の伊東市議会には議長がいません。そうなると、伊東市議会側としては議長が不在のため、地方自治法101条第6項に基づいた議長による臨時会を開催ができないということになります。
つまり、田久保市長は地方自治法上、二度目の不信任を阻止するために、臨時会の開催をせず、招集権を持つはずの議長を誕生させないということができてしまうのです。
総務省自治行政局行政課にも念のため確認しましたが、田久保市長は臨時会のみならず、定例会を開催しなくとも法律上罰則はありません。また、伊東市の定例会会議規則上も年に4回定例会を開かなければならないと定められていますが、こちらも罰則はありません(伊東市議会事務局調べ)。
プロ野球のドラフトで巨人軍が江川選手を、「空白の一日」という制度上のすき間を縫って電撃獲得した事件がありました。
モンスター級の破天荒ぶりを発揮している田久保市長なら、市議会出直し選挙の結果を反故にし、二度目の不信任決議の可決を阻止するために、プロ野球ばりの制度上のすき間を突いてくる可能性は十分あるのではないか。
本来、政治のことは政治で解決するのが筋です。
しかし、今の状況では日本の現行法制度上、少なくとも地方自治法上では伊東市の問題は政治解決できない状況にまで追い込まれています。
もはや捜査当局の力を借りるか。
あるいは、田久保市長が初当選後、法律上1年間はできなかった市民の力によるリコールを成立させるか。
捜査当局の動き次第では田久保市長は地方自治法上、初当選してから1年後となる令和8年5月25日まではまだまだ続く可能性があるということです。
田久保市長はこのようなカードを切ることが物理的にはできてしまうということだけは、しっかり頭に入れて、伊東市民はもちろん、各関係機関も備える必要があります。 補足:阿久根市では、竹原市長のもと「平成22年第1回定例会を2月22日に招集(会期は4月19日まで)後、8月25日に臨時会を招集するまで議会の招集はしていない。」(阿久根市役所総務課行政係調べ)と、半年以上も開催しなかったケースがあります。


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