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第4回映画祭 1次審査振り返り。

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今からちょうど30年前。

2年間にわたり、毎月1本の報道特集をフジテレビニュースJapanで制作していました。

1週間で調査、構成、2週間で取材、撮影、1週間で編集、オンエアーという、ディレクターの同僚とは「終わりのない期末テスト」と言い合っていました。

とくに、1995年は1月に阪神・淡路大震災、3月にオウムの地下鉄サリン事件と、歴史的な事件が相次ぎ、その年は1月から7月までの間でたった3日間しか休みが取れませんでした。

まさに「働いて、働いて、働いて~」を強いられていましたが、当時の現場にはパワハラも、労基という概念も徹底されていませんでした。

とはいえ、ひとの3倍は働いたので同じ20代の少なくとも2倍は給与をもらっていたので我慢しつつ、しかし、何よりも映像制作スキルはそのときにかなり習得することができました。

1997年にはフジテレビを辞めて鎌倉市議になりました。

そのときに、今ではアニメ、スラムダンクの影響で多くの外国人が押し寄せている江ノ電の鎌倉高校駅横の踏切前を題材に取材、撮影、公開しました。

当時の外国人観光客はゼロ。

なぜ取り上げたかというと、国道134号線の江の島方面に向かう車の右折レーンが無いために、鎌倉高校駅横の踏切の前が渋滞してしまう。 また、その渋滞が慢性的に国道134号線、ひいては湘南の車の渋滞の根源であると考えたからです。

お粗末なビデオカメラと、ソニーの編集機で10分くらいの動画にまとめました。

当時、インターネットは存在していましたが、動画をオンライン上に配信するために、稲村が崎に住んでいた配信会社の社長に素材を手渡して東京の彼の会社でアップロードしてもらう必要がありました。

さらに、アップロードをしたあとも課題があり、視聴者側の環境によっては動画を開けない、あるいはファイルを開くことができたとしても、動画がスムーズに動かず、アクションリポートがコマとびになってしまうというひどい状況でした。

しかし、それでも市議会の一般質問で取り上げ、関係者は観てくれたのか、結果として鎌倉高校駅横の踏切前に右折レーンができて渋滞は大きく改善しました。

そんなことを振り返りつつ、この30年で動画の配信環境は革命的に進化し、高校3年生の次女はテレビ局で教わる必要もなく、自らネットで調べて無料動画ソフトを拾って自由自在に高校でホラー映画を制作していました。

本当に隔世の感があります。

このような一億総ディレクター時代の中で、今回も多数の製作者から第4回石垣島湘南国際ドキュメンタリー映画祭の応募がありました。

誰もが動画を撮影し、簡易に編集できる時代に合っても、30年経っても変わらないのは題材の選び方とストーリーラインの趣向など魅せる方法は普遍です。

今回も審査していて思うのは、まず、題材の選び方。

そもそも取材対象として、よくこのようなネタを見つけてきたなという作品もあれば、ひとの日常の切り出し方で映画にしてしまう作品もあります。

生まれてから死ぬまですべてのひとにドラマがあるわけで、普段は我々が見落としがちなドラマを切り出して映画としてまとめてしまう力に興味をそそられます。

ドキュメンタリーの場合、登場人物のインタビューが中心になりがちですが、インタビューの羅列ではなく、コメントのどこを切り取るか。

インタビュー以外のシーンをどのようにストーリーラインを紡いで視聴者を飽きさせない作品にするのか。

映画なのでテレビと比べると芸術性、とくに映像の撮り方の工夫にもある程度目を凝らしますが、私はテレビ出身なので、この作品が面白いか面白くないか、そこにもこだわってしまいます。

フィクションでいえば映画の脚本が重要になってきますが、ノンフィクション(事実ベースの再現記録映画も応募可で、5作品は再現ドキュメンタリー)の場合は、構成が作品のメッセージ性の強さ、深さのカギを握ることになります。

以上のような視点から審査委員会では1次選考を実施して、入選作品を選定しました。

応募いただいた作品の中には作品の存在自体が貴重で、海外の国際映画祭で入選している作品でも選考に漏れたケースもあります。多数の応募の中から厳選していますのでご理解いただければ幸いです。

最終選考は当映画祭では審査委員が多数決で決めることはせず、長編、短篇、それぞれひとりのプロに審査を委ねます。


ちなみに、過去3回の審査過程を見ると、長編を担当する筒井武文東京藝大名誉教授は「映画は時間藝術」という点を重視し、時間のとらえ方をどのように工夫して作品に仕上げるかに重きを置いています。


また、短篇を担当するTプロデューサーこと元日本テレビの土屋敏男監督は「このひとにしか撮れない作品」という観点で評価していると過去に作品講評しています。


そのほか、視聴者からの共感性の目安としては観客賞も大切なメルクマークです。

3月の上映会でどのような結果となるのか、楽しみにしたいと思います。

写真は10年前、48歳の時に藝大に入学して映画、初監督作品を撮影したときの他の学生メンバーとのカットです(みなさん、今は現場で活躍中です)。

 
 
 

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